指導についての考え方や内容を説明します。
※より具体的な指導方針、個別スキルについては随時更新予定です。
指導対象と考えている子供
ホークスはバスケットボール初心者、中級者、運動が苦手な子供が対象のチームです。
すでにファンダメンタルが身についている子供には物足りなく感じるかもしれません。
指導方針
指導の基礎理論
日本ではバスケットボールは人気のあるスポーツですが、野球やサッカーと比べると、リテラシーが高い競技とは言えません。
バイオレーション、ファールなど、経験者でも学習したり審判指導員の方から教えていただいたりして、初めて理解できる事が多いです。
残念ながらホークス指導者のプレーヤーとしての経験値は高くはありません。
体の動きを身につけやすい小学生期のプレイヤーに指導する場合、我々の経験だけに基づいた指導ではリスクが高いと判断し、バスケットボールについて学習、理解した上で指導する事にしました。
バスケットボール指導の基礎理論は、日本バスケットボール協会や有志の指導者の努力により体系化されつつあります。
謙虚な気持ちでバスケットボールの競技性やルールを学び、思いつきではなく根拠を持った指導を心がけています。
参考資料
我々が指導する際に利用している参考資料です。
これらをベースに一般論として体系化されたスキル指導、ホークスの独自ではない指導を心がけています。
よりよい方法を模索するため、上記資料だけでなく、web(動画、ブログなど)も並行して確認しています。
昔に比べ現代では容易に情報が集められるので、指導者の役割のひとつはチーム、プレイヤーの状況を踏まえ、より適切な方法を選択する事と考えています。
より価値が高いものは何か、現在のチーム状況を考えて一番必要なものは何かを判断できて、それを的確に選択・実行できることが優秀なコーチの条件になっているのです。
バスケットボールの教科書1 技術を再定義する(鈴木 良和)
しかしその決定は、最善の方法を見極めたうえで行われるべきだ。その決定に至るまでには、他人の提案とアイデアをよく考慮すべきである。
元祖プロ・コーチが教える 育てる技術(ジョン・ウッデン)
指導方針のアップデート
ドリブル・パス・シュートなど、個別スキルの方法論も進化しており、常に考え方を変化させる事が大切だと考えています。
コミュニケーションツールの利用や動画の共有で、コーチ陣で協力しながら理解を深めるよう努めています。
一方で情報に安易に飛びつかず、これまでの理解との比較から、最終的にはこれまでどおりの方法を採用することもあります。
指導への落とし込み
ホークスは原則、JBAの以下方針に沿った指導方針を採用しています。
①9〜12歳
バスケットボール指導教本 改訂版 上巻(日本バスケットボール 協会)
この時期は、いろいろな動きに“挑戦”させることが大切である。「スマートな身のこなし」というのは、「状況に応じた適切な動き」という意味である。
身に付けたいスキルがある場合、その身のこなし(ハンドワーク、フットワーク、上体の使い方)、そのように体を使う理由、カウンターアクションなどをコーチが理解、実践してから指導するようにしています。
ドリブルを例にしたホークスの指導の考え方
まずは指導者がドリブルというスキルの全体像を把握しするようにしています。
- ドリブルの目的は?
- いつ使うのか?
- ドリブルの種類は?
- どのようにドリブルをつくのか?
- どのようにドリブルチェンジをするのか?
- ドリブルチェンジの選択肢とその理由は?
- ドリブルが上手くできない原因は?ハンドワークか?フットワークか?
- その動きがディフェンスに防がれてしまった場合の次の選択肢は?
個別ドリルでは体の使い方の全体像を伝え、うまくできない場合は、ポイントを分けて練習し最後につなげます。
ドリブルの練習ですが極端な場合は、つま先の使い方から指導する場合もあります。
小学生は入団時期、学年、性格により理解力に差が出やすいので、アドバイスも使い分けるようにしています。
強度は「止まったまま」「動きながら」「ディフェンスをつけながら」と段階的に上げ変化させます。
そのままストレートに上げられる事は稀で、3歩進んで2歩下がるように進みます。
がまん強い指導が必要ですが、スキル習得までのステップを理解していれば時間がかかるのは当然です。
技術トレーニングだけではなく、コーディネーショントレーニングも組み込み、子供たちが飽きず楽しめる内容にしています。
はじめはティーチング主体、ある程度理解できてきたタイミングでコーチングによる指導を使い分け、子供自身が問題に気がついて解決できるような工夫もしています。
主な指導内容
主な指導内容は以下になります。
中学での部活、移籍などチームが変わっても使うスキルという点に配慮し、チームの状況に応じて段階的に指導していきます。
- ファンダメンタル(基礎、バスケットボールに必要な身のこなし)
- コーディネーションドリル
- ドリブルを中心としたハンドリングスキル
- パス(9種、プラスアルファ)
- アウトサイドシュート
- 状況に応じたレイアップ
- 1対1(3つの状況に分解)
- ファストブレイク(3レーン)
- モーションオフェンスの基礎(DDMがベース、カッティング、バックドア、基本的な合わせの考え方)
- スクリーン(バックスクリーンからのピック&ロール、ドリブルハンドオフ)
- 複数人対複数人のプレー(2対2、3対3、もしくはアウトナンバー、ドリブル有/無)
- ディフェンス(1、2、3線、ポストディフェンス)
練習時間も理由ですが、ナンバープレー(セットオフェンス)など、チームが変わった場合に使わなくなってしまうスキルトレーニングは行わないようにしています。
※5OUT、4OUT1INなどポジションセットの指導は行います。
指導計画について
子供たちのスキルや体力をふまえ、指導のアウトラインを決めています。
当日の練習メニューや子供たちの良かった点、悪かった点などは、コーチ陣でドキュメントで共有しており、意見交換しながら連続性のある練習計画を立てています。
以前は年間計画も考えていましたが、子供の成長やチームの状況が変わる事が多く予測困難のため、長くても3ヶ月程度のスパンで計画をするようにしています。
体がスキルを習得するまでの考え方
オープンスキルのバスケットボールでは、意識は相手や周囲に向かうため、無意識でスキルが使えるることが習得の条件となります。
スキル習得が完了するまでには5つの段階があると言われています。
- 0段階:無知(スキルについて何も知らない状態)
- 1段階:有知(スキルについて動きや目的を理解した)
- 2段階:意識的/不可能(自分のイメージと体の動き一致していない)
- 3段階:意識的/可能(自分のイメージと体の動きが一致し、できるようになった)
- 4段階:無意識的/不可能(有ディフェンスなど周囲の状況に意識が向き、まだスキルが使えない。意識しないとできない状態。)
- 5段階:無意識的/可能(無意識でもスキルが使える。スキル習得完了。)
スキル修得の5つの段階(知識・意識・無意識)
日本ラグビーフットボール協会
私たちが体系的にスキルを理解しようとする1つめの理由は、子供たちが「無知→有知」に切り替わるフェーズで間違った理解をさせないためです。
指導者の誤解により、間違った動作で「無意識的/可能」に落とし込まれると、神経系統の発達量が著しく減少する、中・高校生期での改善は難しい、もしくは何倍もの労力を要するというのが、2つ目の理由です。
ボランティアとはいえ指導者には一定の責任があると、私たちが考える理由でもあります。
特に大切にしているスキルや指導方針
バスケットボールの基本的な身のこなし(ファンダメンタル)
体の動かし方を身につけるには、反復と神経発達量が関連します。
小学生は神経発達期にあり、間違った体の使い方を覚えると、怪我など将来のプレーにも影響を与える可能性があるので、基本的な身のこなしを覚えることを重視しています。
年代ごとの発達を無視したトレーニングは将来的にマイナスとなる。たとえば小学生時期に筋トレを導入するとある程度成績を上げられるが、反面この時期に最も重要な「動き」の習得が不十分になってしまえば、それを中・高校生時期になってから挽回するのは容易ではない。
スポーツトレーニングの基礎理論
特にミニバスケットボールで基本技術を覚えてきたかどうかで、中学以降の技術の習得速度が大きく変わります。
バスケットボール 監督・コーチ入門(田渡 優)
パワースタンス、ステップの習得など、他のスポーツをする上でも大切な内容もあります。
ゲームライクな状況では、ドリブル、パス、シュートは個別のスキルとして成立するものではないため、バスケットボールの基礎的な身のこなしができることがとても大切だと考えます。
スキル習得におけるボトルネック
スキル習得の際、子供全員がスムーズに覚えられる訳ではありません。
例えば、シュートが上手くならない場合を考えると、シュートの打ち方ではなく、その前の予備動作に原因がある事もあります。
ハンドワーク、フットワーク、上体の使い方など、個別の動きに注目して原因を探ります。
原因が特定できたら、個別の動きを分解して練習し、最終的に体全体の動きとして組み合わせます。
どうしてもスキル習得に時間がかかる場合、必要に応じて動画を撮影しコーチ陣で確認しながらボトルネックの特定をするようにしています。
これまで指導した子供の事例
- 高学年(数年プレー)
- ボスハンド
- フリースローが届いたり届かなかったり安定しない
高学年、ボスハンドという事を考慮すると、フリースローが届かない事はかなり珍しいケースです。
動きを確認するとハンドワークと上体の使い方に問題がありました。
修正したところ、すぐにスリーポイント程度の距離から届くようになっています。
注意したいのはこの時点では「意識的/可能」な状態で、ディフェンスがついている状態(動きに意識を向けられない状態)ではまだスキルを発揮できません。
スキル獲得のためには「無意識的/可能」の状態に移行するまで、上記の動作を反復する必要があります。
本人にはとても気の毒ですが、3、4年生から一般的ではないシュートを続けてきてしまったので「無意識的/可能」の状態になるまで、かなりの時間を要する可能性があります。
これが我々ができるだけ正しい動きにこだわる理由です。
ボール接触率75%以上
ボールに触る時間は少しでも長く、プレー以外の時間でもハンドリングは積極的に行います。
ボールを離した練習は、ダイナミックストレッチ、基本的なフットワーク、体幹トレーニングを行う時のみです。
ホークスでは持久力が伸びやすいのは中学生期からと考えており、2メン3メンのように繰り返し走るようなドリルもあまり行っていません。
身体(形態)の発達の著しい中学生時期には、身長・体重だけでなく呼吸気・循環器系も発達するので、持久力トレーニングに適した時期である。
スポーツトレーニングの基礎理論(横浜市スポーツ医科学センター)
ただし、チーム全体を見渡した時に明らかに走り方が不自然な子供が多い場合、修正するための指導に時間をかける事はあります。
コーディネーションスキル
小学生期は神経発達量が多い時期で、神経系に影響を及ぼすコーディネーションスキルが低い場合、高校生以降の伸びが少なくなると言われています。
ホークスではJBAの方針に沿い、コーディネーションドリルを重視しています。
練習では個別のスキルと組み合わせたりゲーム性をもたせたり、楽しんで取り組める工夫をしています。
子供たちも積極的に参加できますし、以降のドリルに前向きに望める効果もあります。
ボールハンドリングとドリブルワーク
ボールハンドリングは実際の試合で使うものではありませんが、シュート、パス、ドリブルを下支えするスキル、スキル同士を連結するスキルと考えています。
チームオフェンスとしてはパスファーストであるものの、ドリブルはハンドリングの強化にもつながりますし、プレシャーを避けるためのスキル(ボールを失わないためのスキル)と考え、優先的に指導しています。
オープンスキル/カウンタームーブ
オープンスキルとは対戦相手の動きにより使うスキルが変化する事です。
バスケットボールはオープンスキルのスポーツでカウンタームーブ(相手の逆を取るプレー)の連続です。
いくつかの動きを組み合わせて指導し、「この場合はどうする?」と問いかけ(ティーチング)、子供自身が次のプレーを選択できるような指導をしています。
アウトサイドシュート
ドライブのカウンタームーブ、フリースローを重要視しているため、アウトサイドシュートの練習もよく行っています。
ハンドワーク、姿勢、フットワークとフォームを作るまめに、かなり細かく指導する場合があります。
背の高い子を特別扱いしない
試合の中で役割ができる事はありますが、練習では全員が同じドリルをしています。
ポストアップやダンカースポット付近からの合わせの動きなど、小さい子も大きい子も練習するようにしています。
小学生の時期に背が高くても、それ以降伸びない場合もあるかもしれません。
集合はダッシュ
バスケットボールはトランジションスポーツです。
攻守の切り替えは、頭の切り替えであり、集合はダッシュするように指導しています。
実際、すぐ集合できない子供は、オフェンス/ディフェンスの切り替えがワンテンポ遅い傾向があります。
声を出す事
声を出せる事。というのは1つのスキルだと考えています。
試合中、長々と会話はできません。普段の練習から声を出せる習慣というのを大切にしています。
中には大人しい子供もいるので必要に以上に大きな声は求めません。
ただ、チームで自分の役割を意思表示できるぐらいの声が出せるようになって欲しいと考えています。
声を出す場面
- 「ボールOK!」「ディナイ!」など、見方に自分の役割を伝える。
- ファストブレイク、自分がフリーな時に声でボールマンに呼びかける。
- リバウンドの際、「ボックス!」と声を上げ、チームメイトにボックスアウトを呼びかける。
- 試合に出ていない時の応援や、練習中のチームの盛り上げ。
小さな変化にも目を配る
小さな変化にも、できるだけ目を配るようにしています。
例えば、子供達を前にコーチが質問します。今までは声も出せなかったような子が手を上げ発言するようなケースです。
バスケのスキルアップとは関係なさそうに見えます。
ですが、スキルの意味を理解している証左でもあり、人の前で発言できるようになった。という事も1つの成長と考え、褒めるようにしています。
ホークスのコーチは、このようなケースを喜ぶタイプの人間が多いです。
指導・練習計画、チーム運営に関するコーチ陣での話し合い
子供がうまくプレーできない原因をコーチが間違って理解しているケースは良くあります。
練習中や練習後にコーチ陣で意見を出しながら、原因をすり合わせるようにしています。
ドキュメントでも子供のプレーや、チーム全体、自身の指導で良かった点、悪かった点をできるだけ当日中に共有するようにしています。
運営方針についても同様で、チーム運営がおかしな方向に向かないように随時話し合っています。
やみくもに精神論は使わない
スポーツにおいてメンタルはとても大切な要素ですが、我々は体を正しく使ったり、状況を正しく理解する事をより重視しています。
それができる事で、より良い結果が得られ前向きなメンタルを獲得できるようになります。
目の前の課題を少しずつクリアしていく事が、本人の自信に繋がりメンタルが向上していくと考えています。
体験入団のお申し込みやチームについて
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